Japanische Klassiker mit Furigana
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ふえふきがわのじょうりゅう(ひがしさわとにしさわ)
山の憶い出 上
木暮 理太郎
Lesen Sie 山の憶い出 上 (ふえふきがわのじょうりゅう(ひがしさわとにしさわ)) von 木暮 理太郎 (こぐれりたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 284.014 Zeichen · 565 Bildschirme
明治十四年に登山した高橋白山の記行には、「戸台戸三、口十二」とあるが、其後一戸を減じたものか、二戸しか無かったように思う。教えられた人の家は、二軒の中でも構えの大きい方であろうと、これは誰しも想像する通り、私も川を少し離れて南向きの段丘の裾に建てられた、がっしりした板葺屋根の家に歩み寄った。入口から「今日は」と挨拶して土間に入ると、上り框に腰かけて何か相談していた五、六人の荒くれ男の目が一斉に私に注がれたので、少したじたじとなった。見ると框の横に大きな炉が切ってあり、その正面に熊の皮を敷いて、三十五、六歳かと思われる小肥りの男が雪袴の膝を組んでいた、それが主人であった。
「小松伝弥さんのお宅は」
「ここだよ」
主人が答えて怪訝な顔をする。訳を話して一泊を頼むとすぐ承知してくれた。
奥の間に通されて打ち寛いだところへ、七十許の此家のお婆さんがお茶を持って来て、こんな所へ独りで何の為に来たのかとたずね、それから年寄の細かい話があれこれと一時間近くも続いた。いつもは静かな所であるが、今は小黒川の谷で伐採が行われている為に、元締と飯場の取締が此家に泊っているので、人夫衆の出入りが多いのだと説明する。