Japanische Klassiker mit Furigana
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ふえふきがわのじょうりゅう(ひがしさわとにしさわ)
山の憶い出 上
木暮 理太郎
Lesen Sie 山の憶い出 上 (ふえふきがわのじょうりゅう(ひがしさわとにしさわ)) von 木暮 理太郎 (こぐれりたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 284.014 Zeichen · 565 Bildschirme
陽炎の様な淡い水蒸気が其上に軽く漂うて、末は遥かに雲の中に没している。両岸の岩壁は殆んど垂直に近い凄まじい崩壊面を見せたのみで、低く垂れた雲に掩われているが、私達の心を惹き付けるには充分であった。
下るに従って崖は高くなり谷は狭くなって、終には左からのり乗した山の裾で袋のように閉じられている、――閉じられているとより思えない、不安に騒ぐ胸を押し鎮めながら、脅かすように突立った窄い岩壁の間を少し左に行くと、谷は俄然右に開けてまた長い雪渓が始まる。両崖から崩れ落ちた岩屑や土くれで著しく汚れてはいるが歩くには反て楽である。鬱陶しい霧や雲はもう遥か後になった池ノ平のあたりをまだ暗く包んでいる、何処かに日のさす気配がして谷の空が明るくなった。久振りで濃い翠に紫の影をやどした針葉闊葉の混淆樹林が行手に顕れて来た時には、疲れに疲れた私の神経は不意に与えられたこの慰安の前に全く新たなる快よさを感じた。
三窓の大雪渓との出合に達して、尚も雪の上を二町程下ると雪渓は茲に尽きて、真白に霧を吐く奔湍と雷のような瀬の音とが続いた、河原は次第に開けて樺の木立の上に屋根ほどの大きな岩が幾つか顕われる。