Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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やまぶきちょうのさつじん

山吹町の殺人

平林 初之輔

Lesen Sie 山吹町の殺人 (やまぶきちょうのさつじん) von 平林 初之輔 (ひらばやしはつのすけ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 18.530 Zeichen · 37 Bildschirme

Aozora Bunko

間借りでもしてゆけば」と光子はうつむきながら答えた。

「三十円位なら僕でも出せるがなあ。君さえかまわなければ」

「だってそんなことをしていただいちゃすまないわ」

「なあに、君の方さえよければ、僕は是非(ぜひ)そうさして貰いたい位だ」

こうして光子はカフェをやめることになったのである。大宅は実際月三十円の負担と、一人の女性を奴隷状態から救ったという、人道主義者的の誇りとの交換を後悔してはいなかった。その日から大宅の生活は一層ひきしまって彼はふわふわした女性崇拝主義者から、堅実な青年に一変したのであった。それまでだって、二人の間の関係はきれいなものではあったが(勿論(もちろん)心の中まで彼がピューリタンであったわけではないが)その後は益々きちょうめんになって、光子が山吹町の路地に六畳に三畳の借家(しゃくや)ずまいをするようになってから今まで、手紙の往復以外に、二人が直接会ったことは今夜とでも三度しかなかった位である。金で女に恩を売ったように思われることを極度に警戒して彼は避けていたのだ。

二人のこれまでの関係を知っているもの――或は誤解しているものと言った方が適当かもしれぬ――は世界中に一人しかない――少なくも大宅はそう信じていた。