Japanische Klassiker mit Furigana
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やまでらのかい
山寺の怪
田中 貢太郎
Lesen Sie 山寺の怪 (やまでらのかい) von 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 6.147 Zeichen · 13 Bildschirme
後の方を見るとそこにも大きな邸の土塀があった。人もぼつぼつ通っていた。
「箱根にこんな処はない」
武士は四辺をじっと見たがどうしても場所の見当がつかなかった。二人伴れの男が提燈を持って左の方から来た。武士は声をかけた。
「しょうしょう物を尋ねたいが、ここはどこであろう」
提燈を持った男が足を停め提燈をあげて武士の顔を透すようにした。
「ここは――の紀州さんの邸前だよ」
「なんと申す、――紀州さんの邸前、それではここは江戸か」
武士は驚いた。対手の男は伴れと顔を見合わすようにした。
「江戸も江戸も大江戸の――町だよ」
「そうか、ふん」
武士は考え込んだ。そして、温泉宿の主翁の云った山の方達に酷い目に逢わされたと云うことを知った。それとともに紀州藩の武士ともあろうものが、天狗木精のためにこんな目に逢わされるとは、何たることだと思って口惜しかった。口惜しい一方で、もしこんなことが公の沙汰にでもなろうものなら、どんなお咎めを蒙るかも判らないと思った。それは一身一家にかかわる大事であったが、しかし、幸いに夜であって己さえ云わなければ何人も知っている者はなかった。武士は安心した。