Japanische Klassiker mit Furigana
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さんがくじょうど
山岳浄土
中村 清太郎
Lesen Sie 山岳浄土 (さんがくじょうど) von 中村 清太郎 (なかむらせいたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 4.724 Zeichen · 10 Bildschirme
ありが忙しそうにふとい幹をあがったりおりたりし、ちょうや蜂は、光によってはねをならしたり、うなったりしている。馬がどうかすると画架をたてているわたしのそばへきてひとなつこく顔をよせる、一度はあっというまにパレットをなめられておどろいた。夕方馬を追って村へくだるこどもが手にした敦盛草の花が眼に残る。
筆をとめて窓外をみると、落葉にうもれた庭に山茶花もさいている。――高崎から沼田へ通う馬車にわたしはのっている、雪のちらちらするなかをだらだらのぼりのあがき。声高に話す乗合いはたいがい近在の人々らしく知合いとしか思われない。草鞋をはいた旅仕度のわたしは、どこへいくとたずねられて、あたりの寒山のつもったうえへまた降る雪をながめながら、山へ登るとはちょっと言うのが躊躇された。それほどそのころは山登りも通りがわるく、まして冬の山なぞは用のあるべきところでなかったから。しかし行く手には大きなふところの広い山がゆったりと、たのもしげな形にすわっているのだ、わたしはそこへ心をかよわしている、それは武尊山であった。
川場のぬるい湯へ縮んだからだを浸し、薄根川の谷間にはいって武尊のひろげたふところのなかに、だかれたようになったときは、ほっと微笑のもれる気持だ。