Japanische Klassiker mit Furigana
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あずさがわのじょうりゅう
山岳紀行文集 日本アルプス
小島 烏水
Lesen Sie 山岳紀行文集 日本アルプス (あずさがわのじょうりゅう) von 小島 烏水 (こじまうすい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 138.795 Zeichen · 274 Bildschirme
森の中には款冬の濶葉が傘のように高い。ドウダンツツジの葉と、背向きになって、翠い地紙に、赭っちゃけた斑が交ったようだ、何枚も、何枚も、描き捨てられた反古のような落葉が、下に腐って、半ば黒土に化けている。
また河原へ出た。もう時刻だから、紫の風呂敷を開ける。矢車草の葉包が釈かれて、昼のものが腹に入った。空は、もう泣き出しそうになって、日の眼を見ないから、手が凍える。焚火に暖まっていると、きょうは、七月の二十三日だのに、という声が、一行の中から洩れた。
それから、幾度も川の水を避けて、森に入ったり、河床へ下りたりする。森の枯木は、白く尖って、路を塞いでいるので、猟師は、先登に立って、鉈で切っ払う。太い、逞ましい喬木でも、心が朽ちているから、うっかり捉ると枝が折れて、コイワカガミや、ミヤマカタバミの草の褥へ俯ったりする。また、幹には苔が蒸して、皮は土より柔く、ぼろぼろに腐っているから、生あるものの肌のようで、ぬらりと滑り、ぐちゃりと触れて、いやな気持がする。
谷は、益す迫って来る。手を伸し合う針葉樹は、格子縞を、虚空に組み合せている。その間を潜って、霧の波が、さっと寄せると、百年の古樹は、胴から上を、蝕ばまれるように、姿を持って行かれる。