Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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あずさがわのじょうりゅう

山岳紀行文集 日本アルプス

小島 烏水

Lesen Sie 山岳紀行文集 日本アルプス (あずさがわのじょうりゅう) von 小島 烏水 (こじまうすい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 138.795 Zeichen · 274 Bildschirme

Aozora Bunko

そのときは、富士山が、怖ろしく大きく見えたが、見ているうちに、細くなって莟んでしまった。

……いやな、霧だなあ。

と、私は嘆息する、天地の間には、風が吹くのでなければ、霧が流れるのだ、そのたびに、天幕の中へ、ザアと小粒の雨がそそぎ入る、柱代りの金剛杖が、キュッと呻る、杭に纜われた小舟が、洪水に飜弄されるように、油紙の屋根が、ペラペラ動く。

何時だか、時計を出すのも臆劫だ、朝だか夜中だか解らない。

尻に敷いた褥は、可愛らしい高山植物で、チングルマの小さい白花、アカノツカサクラの赤い花などが、絨氈の斑紋になって、浮き上る、焚火の影に、鮮やかな織目を見せる。

早く日の目が見たい。

早く穴の中から這い出したい。

同じ思いが、仲間の顔色に読まれる、飯を炊くのに、未だ時間がある、思い切って天幕から一、二間歩き出した、岩を二ツ三ツ飛び越えて、次第に爪先が上る、無辺無限の単調の線が、どこへ繋がって、どこへ懸っているのか、解らない……やはりあの空線の一つを辿っている。

天幕が霧の中に、小さくぼんやり見える、四ツ柱に、油紙がぺらぺらとして、田舎の卵塔場のようだ、今まで、あそこに寝ていたのか知ら……この霧と雨の中を、たった紙一枚の下に……火光がパッとさす、霧の水球が、美しい紫陽花色に輝いたかとおもうと、消えた。