Japanische Klassiker mit Furigana
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あずさがわのじょうりゅう
山岳紀行文集 日本アルプス
小島 烏水
Lesen Sie 山岳紀行文集 日本アルプス (あずさがわのじょうりゅう) von 小島 烏水 (こじまうすい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 138.795 Zeichen · 274 Bildschirme
のは、人間が草木のある土を歩くのではなくて、草木の世界に人が無理やりに割り込んで行くのである、初夏の青が緑になり、緑の上にも年々の黒い緑が塗られて、蒼黯い葉で丸く塊まった森は、稀に入って来る人間を呑み込んで、その蒼い扉をぴったりと閉じ、シンと沈黙してしまう、唐松の梢が、風にさやさやと揺めくと、今まで黙っていた焼岳の灰が、梢を放れて粉雪ほどに、人間の肩に落ちかかる、赤蜻蛉が、谷川の上を、すーい、すーいと飛んで行く、空は帯のように細くなってしまう、稀に来る人の足音におどろいて、小さい黄色の蝶の群れがパッと一時に舞い立つと、秋の黄ばんだ銀杏の葉のように、上を下へと入り乱れる、私の友人で、昆虫学者なるT君が、去年私と一緒にこの路を通りながら、島々谷ぐらい、胡蝶の多い谷はすくないと言われたのを憶い出して、しばらくは飛んで行く黄色い小さな魂を見つめていた。
この谷は、しばらくは、一方は截っ立った崖で、一方は森の下道である、そして板橋一つで、向う岸へ往ったり、こっちへ来たりするので、橋が多い、その板橋を渡る時には、いつも冷たい