Japanische Klassiker mit Furigana
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あずさがわのじょうりゅう
山岳紀行文集 日本アルプス
小島 烏水
Lesen Sie 山岳紀行文集 日本アルプス (あずさがわのじょうりゅう) von 小島 烏水 (こじまうすい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 138.795 Zeichen · 274 Bildschirme
嘉門次は、崖の上から手を借して、片手で樅の幹を抱えながら、力足を踏ん張って引きあげる、私も登ったが取り残された犬は、丸太を爪で、がりがり引っ掻いていたが、駄目と見極めをつけて、あちこち川砂を蹴立てて駈けていた、崖は截っ立って、取りつくところもないので、悲しそうにきゃん、きゃん、啼いている、森の中へ入って行く私どものうしろから、水分の交った空気を伝わって、すがりつくように吠えるのが、どこまでも耳について聞える、嘉門次は口笛を吹いて、森の中に没しながら、自分たちの行く路を合図して、森々たる喬木の蔭を潜る、すると小さな路がついていて、自然と崖を越して、河原へ下りる、鉱山発掘のあとの洞穴があって、その近傍だけは、木材を截って櫓井戸を組み合せ、渋色をした鉱気水が、底によどんでいる、暫らく休んで、鯊のつくだにで、冷たい結飯を喰べたが、折角あったと思った路は、ここで消えてしまっている。「犬は大丈夫かい」「エエエエ直っきに来ますわ」「どうしてあの崖を駈け登れるだろう」慕門次は笑っている、ひょいと見ると、鼻をフン、フン、やりながら、もういつの間にか、傍へやって来て、嬉しそうに尾を掉っている。