Japanische Klassiker mit Furigana
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ひゃくものがたり
山椒大夫・高瀬舟
Lesen Sie 山椒大夫・高瀬舟 (ひゃくものがたり) von Mori Ōgai (森 鴎外) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 45.466 Zeichen · 92 Bildschirme
とにかく自分が行くことにした。
蒸暑い日の日盛りに、車で風を切って行くのは、却て内にいるよりは好い心持であった。田と田との間に、堤のように高く築き上げてある、長い長い畷道を、汗を拭きながら挽いて行く定吉に「暑かろうなあ」と云えば「なあに、寝ていたって、暑いのは同じ事でさあ」と云う。一本一本の榛の木から起る蝉の声に、空気の全体が微かに顫えているようである。
三時頃に病家に著いた。杉の生垣の切れた処に、柴折戸のような一枚の扉を取り付けた門を這入ると、土を堅く踏み固めた、広い庭がある。穀物を扱う処である。乾き切った黄いろい土の上に日が一ぱいに照っている。狭く囲まれた処に這入ったので、蝉の声が耳を塞ぎたい程やかましく聞える。その外には何の物音もない。村じゅうが午休みをしている時刻なのである。
庭の向うに、横に長方形に立ててある藁葺の家が、建具を悉くはずして、開け放ってある。東京近在の百姓家の常で、向って右に台所や土間が取ってあって左の可なり広い処を畳敷にしてあるのが、只一目に見渡される。
縁側なしに造った家の敷居、鴨居から柱、天井、壁、畳まで、bitume の勝った画のように、濃淡種々の茶褐色に染まっている。