Japanische Klassiker mit Furigana
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ひゃくものがたり
山椒大夫・高瀬舟
Lesen Sie 山椒大夫・高瀬舟 (ひゃくものがたり) von Mori Ōgai (森 鴎外) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 45.466 Zeichen · 92 Bildschirme
「そりゃあ人違だ。おいらあ泉州産で、虎蔵と云うものだ。そんな事をした覚はねえ」
文吉が顔を覗き込んだ。「おい。亀。目の下の黒痣まで知っている己がいる。そんなしらを切るな」
男は文吉の顔を見て、草葉が霜に萎れるように、がくりと首を低れた。「ああ。文公か」
九郎右衛門はこれだけ聞いて、手早く懐中から早縄を出して、男を縛った。そして文吉に言った。「もうここは好いから、お茶ノ水の酒井亀之進様のお邸へ往ってくれ。口上はこうだ。手前は御当家のお奥に勤めているりよの宿許から参りました。母親が霍乱で夜明まで持つまいと申すことでござります。どうぞ格別の思召でお暇を下さって、一目お逢わせ下さるようにと、そう云うのだ。急げ」
「は」と云って、文吉は錦町の方角へ駆け出した。
酒井亀之進の邸では、今宵奥のひけが遅くて、りよはようよう部屋に帰って、寝巻に着換えようとしている所であった。そこへ老女の使が呼びに来た。
りよは着換えぬうちで好かったと思いながら、すぐに起って上草履を穿いて、廊下伝に老女の部屋へ往った。
老女は云った。「お前の宿から使が来ているがね、母親が急病だと云うことだ。