Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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やまつばき

山椿

山本 周五郎

Lesen Sie 山椿 (やまつばき) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 15.911 Zeichen · 32 Bildschirme

Aozora Bunko

四

――だが暫くするときぬに愛を求めた、もしきぬが自分を愛して呉れるなら、俗物どもを凌いでひとかどの人間になってみせる、きぬのため自分の才能を生かしてみせたい。……きぬはそれをなんの疑いもなく信じた、そして変らない愛を誓った。二人の恋は五十日あまり続いたが、母親に発見されて仲を割かれた。母は誰にも知らせず、口実を設けて彼を家から出した。別れる前に、きぬは結婚を申込んで呉れるようにと繰り返し頼んだ。彼はまだその時期でないことを説いた、今のままでは許される望みがない、自分がひとかどの者になるまで待つように、それも精ぜい一年か二年だからと。

「別れてからはいちども会う折がございませんでした、そして母も亡くなりました、こちらとの縁談が起こりましたとき、もし母が生きていて呉れましたら、――」

四

縁談が定ったとき自決すべきだった。然しそれにはなにかが欠けていた、良三郎にいちど会いたかったのも慥かだ、どこかに生きる途があるように思えた、漠然とした、然し烈しい、生への執着もあった。もう少し時を待とう、ぬきさしならぬ場合でもおそくはない、そしてずるずるとここまで来てしまった。