Japanische Klassiker mit Furigana
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やぎひげへんしゅうちょう
山羊髯編輯長
夢野 久作
Lesen Sie 山羊髯編輯長 (やぎひげへんしゅうちょう) von 夢野 久作 (ゆめのきゅうさく) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 51.441 Zeichen · 102 Bildschirme
おまけにその容易ならぬ曲者(くせもの)は、吾輩の顔を見ると、溶(と)ろけるような心安さでイキナリニッコリと笑いかけたものだ。
「お久しう御座います。羽束さん」
吾輩は二三歩ヨロヨロと後(うしろ)に退(さが)った。
……何がお久し振りだ。……何が羽束さんだ……。
と唾液(つば)を嚥(の)み込み嚥み込み相手の顔を白眼(にら)み付けたが、その瞬間に……ヤアーッ……と叫んで天井に飛び上りたくなった。
……お久しい筈だ。この女こそ箱師のお玉といって名打ての女白浪(しらなみ)だ。東京で警視庁に上げられる度(たび)に、吾輩から感想を話させられた女だ。この女の身の上話を雑誌にヨタッたお蔭で吾輩は多量の原稿を稼いでいる。いわば吾輩の大恩人だ……と気が付くトタンに吾輩の心理状態がクルリと転向した。
西洋の名探偵心理から、一足飛びに、純粋の江戸ッ子心理に寝返りを打った訳だ。もっとも好き好んで変化した訳じゃない。そうしなければ太刀打(たちうち)出来ない窮境に陥りかけている事を本能的に自覚したせいであったろう。トタンにお玉が差し伸べた手をシッカリと握ったものだ。お玉は吾輩の耳元に唇を寄せて囁いた。