Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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あるおんなのしょうがい

嵐・ある女の生涯

島崎 藤村

Lesen Sie 嵐・ある女の生涯 (あるおんなのしょうがい) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 47.846 Zeichen · 96 Bildschirme

Aozora Bunko

「さあ、お茶のお支度も出来ておりますよ」

と慣れ慣れしく声を掛けてくれた。

おげんはその婆やの案内で廊下を通った。弟の見つけた家にしては広過ぎるほどの部屋々々の間を歩いて行くと、またその先に別の長い廊下が続いていた。ずんずん歩いて行けば行くほど、何となく見覚えのある家の内だ。その廊下を曲ろうとする角のところに、大きな鋸だの、厳めしい鉄の槌だの、その他、一度見たものには忘れられないような赤く錆びた刃物の類が飾ってある壁の側あたりまで行って、おげんはハッとした。

弟の家の婆やとばかり思っていた婦人の顔は、よく見ればずっと以前に根岸の精神病院で世話になったことのある年とった看護婦の顔であった。一緒に俥で来たと思ったお玉も何処へか消えた。

「何だか狐にでもつままれたような気がする」

とおげんは歩きながら独りでそう言って見た。

「小山さん、しばらく」

と言っておげんの側へ飛んで来たのは、まがいのない白い制服を着けた中年の看護婦であった。そこまで案内した年とった婦人は、その看護婦におげんを引渡して置いて、玄関の方へ引返して行った。そこの廊下でおげんが見つけるものは、壁でも、柱でも、桟橋でも、皆覚えのあるものばかりであった。