Japanische Klassiker mit Furigana
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じゅんさじしょく
巡査辞職
夢野 久作
Lesen Sie 巡査辞職 (じゅんさじしょく) von 夢野 久作 (ゆめのきゅうさく) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 31.907 Zeichen · 63 Bildschirme
草川さん……」
草川巡査も何やらハッとしたらしく、そういう一知の何かしら狼狽した、オドオドした眼付きを振返ると、ちょっと立止まって、その顔を穴のあく程凝視したので、一知は見る見る真青になって、唇をワナワナと震わした。しかしその時にフッと気を変えた草川巡査は、
「ウン。人目に付くと五月蠅からね」
と何気なく云い棄てて露っぽい小径の笹の間を蹴分け蹴分け急いで行った。
元来この谷郷村は、こうした山奥に在り勝ちな、一村挙って一家といったような、極めて平和な村だったので、高文の試験準備をしている草川巡査は最初、大喜びで赴任したものであったが、そのうちに彼の竹を割ったような性格がだんだんと理解されて来るにつれて、村の者から無上の信用と尊敬を受けるようになった。それに連れて村の納税や、衛生の成績がグングン良くなるばかりでなく、以前は山向うの隣県へ逃込もうとして、よくこの村を通過していた前科者などが、今では草川巡査の眼が光っているためにチットモ通らなくなった……という噂まで立つようになっていた。そこへ起った今度の事件なので、草川巡査は最初からチョット一つタタキノメされたような感じで、一種異様な興奮――緊張味を感じているのであった。