Japanische Klassiker mit Furigana
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こうせつきょうほうずえ
巷説享保図絵・つづれ烏羽玉
林 不忘
Lesen Sie 巷説享保図絵・つづれ烏羽玉 (こうせつきょうほうずえ) von 林 不忘 (はやしふぼう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 365.120 Zeichen · 728 Bildschirme
磯屋五兵衛という名が出たのを聞いて、眠ったように、壁に頭をあずけて眼をつぶっていた龍造寺主計がむくりとしていた。
「磯屋五兵衛か。きやつまた、御当家へも、何か御迷惑をかけておりますかな」
若松屋惣七は、びっくりした。
「磯五をご存じかな」
「知っているも、おらぬも、拙者は、きやつを成敗せんがために、出府いたしたものでござる」
「ほう。成敗――」
「わけは、ただいま、それなる女衆に話しておきました」
が、若松屋惣七は、特別に興味をそそられたふうもない。何も、彼の興味をそそるものは、なくなっているに相違ないのだ。
お高へ、向き直った。しずかに、いった。
「雨が降れば、あとはまた日が照る。これは、世の定めです。いずれ、いいこともあろう。そういえば、きょうは、雨のようだな」
土を打つ細雨の音が、庭にしていた。澄んだ水のにおいが、つめたい微風にあおられて、流れこんできていた。それは、鼻の奥に痛いような、徹った感じのするものであった。
三人は、それを味わうように、しばらく無言に陥った。
ふと、わがことのように、龍造寺主計が、壁ぎわから声を持った。龍造寺主計は、じれったそうに、舌打ちをするのだ。