Japanische Klassiker mit Furigana
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こうせつきょうほうずえ
巷説享保図絵・つづれ烏羽玉
林 不忘
Lesen Sie 巷説享保図絵・つづれ烏羽玉 (こうせつきょうほうずえ) von 林 不忘 (はやしふぼう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 365.120 Zeichen · 728 Bildschirme
お高は、和泉屋の店頭へ雪崩れかかる人浪と、それをくいとめようとする火消しや、鳶のあいだにはさまれて、椿の花が散り惑うようにほらほらと立ち迷った。口ぐちにわめく声が、地うなりのようにお高を包んだ。
「この金剛寺門前町を他町の者に荒らされて、黙っちゃいられねえ」
「昔からのおれたちの商売をどうしてくれるんだ」
「卸し同様の相場はずれの値で張り合って、この辺一帯の小あきんどの口をほそうてんだ。和泉屋は人殺しだ」
「そうだ。和泉屋は人殺しだ」
「やい、人殺し」
「和泉屋をたたきつぶせ」
「門前町から追ん出せ」
「家ん中へ踏んごんで、品物は、困る者にわけるんだ」
「店のやつらは簀巻きにして、江戸川へほうりこめ」
そこここにもみあいがはじまった。群集の一部は、素っ裸にねじり鉢巻きをした若い衆を先頭に、警戒を破って、和泉屋の大戸へ接近した。和泉屋は、もうすっかり戸をおろして、店員たちは裏口からでも逃げたらしく、家の中はしいんとしていた。
お高は、夏の宵の蚊柱がくずれるように、ぶうんと音を発して飛びかわす拳や下駄や、棍棒の下をくぐって、しなやかな手をふって逃げまわっていた。逃げまわりながら、その和泉屋襲撃の先達をつとめている、すっ裸の若い衆が、いつも来る酒屋の御用聞きであるのをみとめて、妙にふっと、おかしくなった。