Japanische Klassiker mit Furigana
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こうせつきょうほうずえ
巷説享保図絵・つづれ烏羽玉
林 不忘
Lesen Sie 巷説享保図絵・つづれ烏羽玉 (こうせつきょうほうずえ) von 林 不忘 (はやしふぼう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 365.120 Zeichen · 728 Bildschirme
その士は、用たしの帰りにでもこの騒擾にまきこまれたらしく、かえりを急ぐとみえて、いらいらしていた。仲間は、手の、定紋入りの提燈をこわすまいとかばって、骨を折っていた。何かいって笑ったが、お高には聞こえなかった。
まだ少年々々している武士の顔が、またお高のほうを向いた。
「手を放すには及ばぬ。しっかりつかまっているがよい。総じて、かような場合には、人の力にさかろうてはなりませぬ。流れに乗った気で、水のごとく、人の押すほうへ押されてゆくのだ」
あはははと笑った。お高は、気やすなお武家だとは思ったが、それかといって、さようでございますかと甘えて、また手を出して腕へつかまることはできなかった。はい、とこたえたつもりだったが、答えたのか答えなかったのか、自分でもわからなかった。彼女は、そこに人にはさまれて立ったまま、気をうしないかけていた。ただ、一空さまと、あの洗耳房の小母さんはどうしたであろうと、瞬間考えた。
三
ぞくっと、寒さが走って、気がついた。屋根からはまだ瓦が降りつづけていた。お高の周囲の人々も、大声にさわぐだけで、誰も、屋根へ上がって行こうとする者は、ないようすだった。