Japanische Klassiker mit Furigana
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こうせつきょうほうずえ
巷説享保図絵・つづれ烏羽玉
林 不忘
Lesen Sie 巷説享保図絵・つづれ烏羽玉 (こうせつきょうほうずえ) von 林 不忘 (はやしふぼう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 365.120 Zeichen · 728 Bildschirme
なにさ、この辛棒が肝心!
動いてはならぬ。
声を立ててはならぬ。
すると、猫侍が吃りの刀を押しとどめて、ぴったり据わっている女の額部に手を当てた。
どきりとした女、胸の早鐘に合わせて、自分と自分へ一心に念じる。
動いてはならぬ。
動いてはならぬ。
と、その胸に、猫侍の耳がくっついて、じいと感をきいている。
動いてはならぬ。
動いては――。
「御前」
「な、何じゃ」
「この女、生きておりまする」
はっとした瞬間。
「死美人生けるがごとしか。どけ」
と猫侍を押しやった主人の足、またどっかりと今度は女の顔の真ん中を踏まえた。
眼と鼻と口をふさいで、大きな素足が載っている。
あまりといえばあまりな!
女の全身に持って生まれた血がおどった。が、ここが我慢! 苦しいだろうがこらえておくれ! と必死に呼吸を詰めて、断末魔のような無言の叫びが身内に渦まく。
動いてはならぬ。
息をしてはならぬ!
足の重みが増してくる。
息をしては――息をしては――動い――足が――足――押す――息――。
あっ!
と思った刹那、咽喉の奥でぐうというような音がして、侍の足の裏がすうっと細い、熱い女の吐息を感じた。