Japanische Klassiker mit Furigana
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こうせつきょうほうずえ
巷説享保図絵・つづれ烏羽玉
林 不忘
Lesen Sie 巷説享保図絵・つづれ烏羽玉 (こうせつきょうほうずえ) von 林 不忘 (はやしふぼう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 365.120 Zeichen · 728 Bildschirme
いつしか風さえ加わったらしい。大粒の水が頬をたたいて、ぬれた裾は、板のように足の運びを妨げる。
それはもう春雨などという色っぽいものではなかった。新しい時世を生み出そうとする陣痛と、わずかに残骸の威をかりて一日の余喘を保とうとしている今日の徳川幕府、この衝突を中心に、目下全国いたるところに血を流し、肉を飛ばしている悲雨惨風、これをそのまま形に表わしたような、すさまじい暴風雨の夜となっていた。
が、守人の心中には、浮世のあらしよりも、今夜の雨風よりも烈しい、大きな渦がまいていた。近寄る人をまき込まずにはおかない愛慾の鳴門だ。守人は全身に雨を受けて、手負いのようにうなりながら、帰路を急いだ。
「そこもとの身にはある筋の眼が光っておることをよもやお忘れではあるまい」
方来居を出るときに玄鶯院がこういった。このある筋とは何をさすものか、それは、いうまでもなく守人にはわかっている。わかっていて、なおかつ愛刀帰雁を唯一の護身者として、こうして暗黒に紛れて出て歩くには、守人にしても、そこによほど重大な用向きがなくてはかなわぬ。
じっさい守人は、このごろ毎晩のように歩きまわるのだ。