Japanische Klassiker mit Furigana
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こうせつきょうほうずえ
巷説享保図絵・つづれ烏羽玉
林 不忘
Lesen Sie 巷説享保図絵・つづれ烏羽玉 (こうせつきょうほうずえ) von 林 不忘 (はやしふぼう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 365.120 Zeichen · 728 Bildschirme
先に立ったまま里好がいう。
「井戸の入口で黒い袋を渡されて、顔もからだも包むんだがな、あんたは髪をもっと引っ詰めて、それから声に気をつけて、中へはいったら万事男のつもりでふるまいなさい」
こういわれて、お蔦がさっきの里好のかえ衣装を思い出していると、その心を読んだらしく里好は、
「いや、あの袢纒は違う」
と打ち消して、
「新網に瑞安寺という寺があってな。江戸中の掏摸の根城になっている。わしはそこで姿を変えてかせいでいたのだ。江州雲州などという、わしの頼みとあらば灯の中水の中へも飛び込もうというすごいのがそろっているが、毎夜本堂に故買の市が立って、神田の閑山なんかが出張って来てうるさくて寝泊まりはできぬ」
「神田の閑山というのは、あの津賀――」
「さよう、津賀閑山――お相識かな?」
とんだ相識、とお蔦が黙っていると、
「食えない爺だ」
いかさま食えない爺である。
「瑞安寺では顔役で、両国のびっこ捨、日本橋の伊勢とならんで鼎の足と立てられているこのわしだが、姿見井戸へ行ってはまるで嬰児だて。えらい奴がおるでな。もっとも、顔や名はわからぬが――まま、保養と修行をかねて身を隠すには、この姿見の井戸に越したところはなかろう」