Japanische Klassiker mit Furigana
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げんじゅつてんまたろう
幻術天魔太郎
野村 胡堂
Lesen Sie 幻術天魔太郎 (げんじゅつてんまたろう) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 45.616 Zeichen · 90 Bildschirme
泉田一家の災難
丹沢の山奥から江戸へ、天魔太郎とふたりの少女は、菜の花ばたけのチョウのように、心のどかな春の旅をつづけました。
いやいや、心のどかとみたのは、勇ましくもやさしい少年少女の旅すがたのうわべだけで、心のなかは、お千代の両親、お城大工の棟梁泉田筑後とその妻の操の身の上をあんじて、ついお千代のおそい足がもどかしくなります。
江戸へはいると、まず築地小田原町の、お千代の家にはいるつもりでしたが、
「待って、あれはなんでしょう」
はるかに見えるわが家をさして、お千代は天魔太郎の袖をおさえるのです。
大工棟梁泉田筑後の家は、町人風の住居ではありますが、小田原町の一角を占領した、みがきぬいた格子づくりで、子分衆から職人たち、下女下男数十人をやしなって、この世の繁昌をあつめたくらしむきですが、それがなんとなくものものしく、すさまじい妖気をたてこめて、ちかづき難いものをはなっていたのです。
「どうしたのお千代さん」
天魔太郎は立ちどまりました。
「あれ、家中のものが、みんなしばられて」
お千代がさした泉田筑後の家からは、番頭も小僧も、下女も下男も、子分も居候までもみんなげんじゅうにしばられて目あかし岡ッ引においたてられ、ま昼の往来へゾロゾロと引だされているではありませんか。