Japanische Klassiker mit Furigana
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げんじゅつてんまたろう
幻術天魔太郎
野村 胡堂
Lesen Sie 幻術天魔太郎 (げんじゅつてんまたろう) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 45.616 Zeichen · 90 Bildschirme
おねがいでございます。道人さま、兄の命をお助けくださいまし」
少女はさっきから、泣いてはうったえ、うったえては泣き、涙もかるるばかりになげくのです。
「おまえはだれだ、兄はなんという?」
道人ははじめてふりかえりました。
「兄は駿河太郎ともうします――私はその妹の月子」
「なに? 駿河太郎というのか? 父親はだれだ――名はなんといった」
「父親は――」
少女はソッとあたりを見まわしましたが、だれもいないと見さだめたか、
「父親は――駿河大納言」
「なに? なに?」
「甲駿二国の領主徳川忠長卿。申すまでもなく当上さま(家光)の血をわけた兄弟、将軍のあとつぎをあらそったと思われ、乱行の悪名をおわされて六年まえの寛永十年、高崎城に幽閉されて、肉親の兄家光将軍から、むざんの死をたまわりました」
「それが、それが、お前たちの父上か」
「兄駿河太郎は、千代田城に忍びこみ、当代の将軍家光公を親のかたきとねらっていけどられ、きょうのま昼をきして稀代の兇賊という悪名のもとにさび槍につらぬかれて、殺されることになっております。おねがいでございます、道人さま」
月子は、またも泣きいるのでした。