Japanische Klassiker mit Furigana
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いくどめかのさいご
幾度目かの最期
久坂 葉子
Lesen Sie 幾度目かの最期 (いくどめかのさいご) von 久坂 葉子 (くさかようこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 59.103 Zeichen · 121 Bildschirme
四時頃、ベルの音がして階段を上るあし音がきこえ、すぐふすまがあいた。途端、私は愕然としたのだ。それは、あの石段での人影なのである。私は半分泣きそうになった。私の面はみにくくはれ上っていて、まぶたさえ容易にあかない始末。私は、いつとはなしに胸に描いていたその人影と自分との夢がぶちこわされて行くのを感じた。
人影は平然と私のふとんの横に坐る。毎朝会っているのに、そんな事はまるで知らないような様子で脈をとり、私の顔を丹念にみる。私はつい反対側をむいて目を閉じてしまう。と、額にのっていた手拭が除かれ、その代りにやはり冷たい、がしかし何となくぬくみのあるものを感じる。そして、それが彼の手だということをすぐ知る。その手は妙に力がはいっており、そのままひっぱられるように私は再びあおむけになる。目を開く。依然として彼は口を開かないで私の顔のみみずばれをみつづける。母は容態を告げる。やっと彼は口を開いた。「有難う」以外の初めてきく言葉。
「顔だけですか」
低くはっきりした声である。かすかに私はうなずく。しゃがれた声を出すのはいやだから。
「すぐなおります。うるしです。