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Japanische Klassiker mit Furigana

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いくどめかのさいご

幾度目かの最期

久坂 葉子

Lesen Sie 幾度目かの最期 (いくどめかのさいご) von 久坂 葉子 (くさかようこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 59.103 Zeichen · 121 Bildschirme

Aozora Bunko

翌朝彼に会った時、私は何も云えなかった。「有難う」でもない、「いやだ」とも云えない、唯、うつむいたままで挨拶をした。しばらく彼は私の肩に手をおいて何も云わずに立去った。私への好意だろうか。馬鹿な、そうじゃない。私への同情だろうか……。不意にぽたぽた涙が落ちた。

その夕、姉は室に入ったまま、笹田先生よと呼びかけても出て来なかった。私は三杯もウィスキイをついだ。萩のゆれる応接間の窓に私と彼とは何も喋らないで小一時間も居た。帰る時、私独り見送って出て、

「もういらっしゃらないで。姉がかわいそう。でも朝はね」

姉に同情したのは虚偽だったかもしれない。私一人で彼に会うことが出来るのだったから。だんだん別れる日までがせばめられてゆく。私は朝毎に彼に会った。その最後の日、九月三十日に、初めて会った時のように紺の洋服をきた彼は私に別れをつげた。

「御世話になりました。ひろ子さんによろしく」

私は手をさし出した。いつまでも握手をしていたかった。

「何にも云えないの、云えないのよ……」

私は小さな涙をその手と手の上に落した。そして更に強く強く握った。

かわいらしい恋だった。