Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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にじ

彩虹

山本 周五郎

Lesen Sie 彩虹 (にじ) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 13.898 Zeichen · 28 Bildschirme

Aozora Bunko

「……たしか知らせた筈だがな、相手は安藤対馬守家の江戸屋敷で」

「おれの問に答えてくれ、桃園のむすめはどうする積りなんだ」

「どうするって、妻を二人持つわけにはいかないよ」

「それが返辞か」

刺すような伊兵衛の視線を、宗之助はさすがに受けかねたらしい、眩しそうに脇へ外らしながら、

「そうだ」

と云った。

「よし、ちょっと立て」

伊兵衛はそう云いながら自分から立った、宗之助はちらと伊兵衛を見た、そしてしずかに立った。伊兵衛はその眼をひたと睨んでいたが、大きく右手をあげ、宗之助の高頬をはっしと打った。力の籠った痛烈な平手打である。宗之助の上身はぐらっと右へ傾いた。

「これが古い友達の別れの挨拶だ」

伊兵衛は抑えつけたような声で云った。

「……貴公は貴公の好むように生きろ、おれはおれの信ずる道をゆく、ひと言云っておくが、正しさというものを余り無力にみすぎるなよ」

そしてそのまま大股に去ろうとすると、うしろから宗之助が、

「樫村」

と呼んだ。

伊兵衛は廊下に立止まって振返った。宗之助はじっとこちらを見た、なにやら色の動いている眼つきだった。

「……二人の仕合せを祈るぞ」

低い声でそう云うと、宗之助は元の席のほうに帰った、伊兵衛もそのまま踵を返した。