Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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おもいでのき

思い出の記

小泉 節子

Lesen Sie 思い出の記 (おもいでのき) von 小泉 節子 (こいずみせつこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 30.841 Zeichen · 62 Bildschirme

Aozora Bunko

又書斎は、西向きに机を置きたい。外に望みはない。ただ万事、日本風にと云うのでした。この外には何も申しませんでした。何か相談を致しましても『ただこれだけです。あなたの好きしましょう。宜しい。私ただ書く事少し知るです。外の事知るないです。ママさん、なんぼ上手します』などと云って相手になりません。強いて致しますと『私、時もたないです』と申しまして、万事私に任せきりでございました。『もう、あの家、宜しいの時、あなた云いましょう。今日パパさん、大久保に御出で下され。私この家に、朝さようならします。と、大学に参る。宜しいの時、大久保に参ります、あの新しい家に。ただこれだけです』と申しまして、本当にこの通りに致しました。時間を取ると云う事が大嫌いでした。

西大久保に引移りましたのは、明治三十五年三月十九日でした。万事日本風に造りました。ヘルンは紙の障子が好きでしたが、ストーヴをたく室の障子はガラスに致しただけが、西洋風です。引移りました日、ヘルンは大喜びでした。書棚に書物を納めていますし、私は傍に手伝っていますと、富久町よりは家屋敷は広いのと、その頃の大久保は今よりずっと田舎でしたのとで、至って静かで、裏の竹籔で、鶯が頻りに囀っています。