Japanische Klassiker mit Furigana
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きょうぞうのちち
恭三の父
加能 作次郎
Lesen Sie 恭三の父 (きょうぞうのちち) von 加能 作次郎 (かのうさくじろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 9.742 Zeichen · 20 Bildschirme
浅七が提灯をつけて裏口から出掛けたのを、母は呼止めてやめさした。十分間も経ってから父は帰って来た。
「帰ったぞ、おい旦那様のお帰りやぞ。」と上機嫌に裏口から入って来た。
「お帰り。」
と母も浅七も同時に言った。浅七は庭へ下りて洗足の水を汲んだ。
「さあ洗え。」
と父は上り段に腰掛け仰向けになって了った。浅七は草鞋の紐を解いて両足を盥の中へ入れさせた。母は冷めかけた汁の鍋を炉に吊して火を燃やした。恭三は黙って立膝の上に顋をもたせて居た。
「恭三! 貴様は何で己の足を洗わんか。」と父は呶鳴った。
恭三は意外に思ったが、何にも言わずに笑って居た。
「己れが帰ったのに足位洗わんちゅう法があるか、浅七がこうして洗うて居るのに、さあ片足ずつ洗え。」
恭三は直ぐ父の命令に服しかねた。けれども又黙って居る訳にも行かなかった。勿論父は真面目にこんな事を言うのだとは思わない。が如何に父が酔って居ても其儘に笑って済ますことは出来ぬと思った。
父は酔った時に限って恭三に向って不平やら遠回しの教訓めいたことを言うのを恭三は能く知って居た。父もまた素顔で恭三に意見することの出来ぬ程恭三は年もとり教育もあることを知って居た。