Japanische Klassiker mit Furigana
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あくまのもんしょう
悪魔の紋章
江戸川 乱歩
Lesen Sie 悪魔の紋章 (あくまのもんしょう) von 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 151.280 Zeichen · 301 Bildschirme
早く、早くここへ」
乳母は幼児の手を取るようにして、瀕死の父の膝の前に坐らせ、自分は甲斐甲斐しく、主人のうしろに廻って、繩を解くのであった。
やっと自由になった山本の右手が、おぼつかなく幼児の肩にかかって、我が子を膝の上に抱き寄せた。
「ぼうや、か、かたきを、討ってくれ。……お父さんを、ころしたのは、かわて、しょうべえだ。……か、かわて、かわてだぞ。……ぼうや、かたきを、とってくれ。……あいつの、一家を、ねだやしにするのだ。……わ、わかったか。わかったか。……ばあや、たのんだぞ。……」
そして、ギリギリと歯噛みをして、すすり泣いたかと思うと、幼児の肩をつかんだ指が、もがくように痙攣して、ガックリと、そのままうっぷして、山本は遂に息が絶えてしまった。
ワーッと泣き伏す乳母、火のつくような赤ん坊の泣声、今まで余りの驚きに、泣く力さえなくおびえ切っていた男の子も、俄かに声を立てて泣き入った。
目もあてられぬ惨状だ。川手氏は又しても節穴から顔を放して、貰い泣きの涙を拭わなければならなかった。
暫くすると、乳母はやっと気を取り直して、男の子を我が前に引寄せ、決然とした様子で言い聞かせた。