Japanische Klassiker mit Furigana
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あくまのもんしょう
悪魔の紋章
江戸川 乱歩
Lesen Sie 悪魔の紋章 (あくまのもんしょう) von 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 151.280 Zeichen · 301 Bildschirme
夢中に話し込んでいる二人の間へ、ヒューッと空から何かしら落ちて来て、女の膝をかすめ、ボートの底に転がった。
「アラッ!」
女は思わず声を立てて、橋を見上げた。空から物が降る筈はない、橋の上を通りかかった人が、投げ落したものに違いないのだ。
男は櫂を一掻きして、ボートを橋の下から出し、それと覚しい辺りを見上げたが、その辺に川を覗いているような人影もなかった。怒鳴りつけようにも、相手はもう立去ってしまっていたのだ。
「痛い? ひどく痛むかい」
女が渋面を作りながら膝をさすっているので、男は心配そうに訊ねた。
「それ程でもないわ。でも、ひどいことをするわね。あたし、まだ胸がドキドキしている。誰かがいたずらしたんじゃないかしら」
「まさか。それに、あの時、ボートは橋の下から半分も出ていなかったから、きっと、こんな所に舟なんかないと思って投げたんだよ。川の中へ捨てたつもりで行ってしまったんだよ」
「そうかしら、でも危いわねえ。軽いものなら構わないけど、これ随分重そうなものよ。アラ、ごらんなさい。何だかいやに御丁寧に縛ってあるようよ」
男は櫂を離して、ボートの底に転がっている一物を拾い上げ、行燈の火にかざして見た。