Japanische Klassiker mit Furigana
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あいとにんしきとのしゅっぱつ
愛と認識との出発
倉田 百三
Lesen Sie 愛と認識との出発 (あいとにんしきとのしゅっぱつ) von 倉田 百三 (くらたひゃくぞう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 64.420 Zeichen · 129 Bildschirme
哲学者は淋しい甲蟲である! お互いに真面目に考えようね。
お手紙拝見。お互いに青春二十一歳になったわけだね。でも苦労したせいか僕の方が兄のような気がしてならない。昨年の正月の艶々しい恋物語を知ってるだけに、冷たい、暗い、汚い寮で侘しく新年を迎えた君がいっそうのこといとしい。君は私と違って花やかな家庭に育ったんだからね。T君が君をロマンチックだって冷笑したって。かまうものか。彼の刹那主義こそ危いものだ。なぜというに、彼の思想には中心点が無いからだ。彼の「灰色生活」は虚偽である。みたまえ。彼の荒んだ生活には、ああした生活に必然伴うべきはずの深刻沈痛の調子は毫も出ていないではないか。さて僕だ。例によって帰省したものの、ご存じのとおりの家庭ゆえあまりおもしろくない。でもさすがに正月だ。門松しめ飾り、松の内の八百屋町をぱったり人通りが杜絶えて、牡丹雪が音も立てずに降っている。
昨日丸山さんが手紙をよこした。つつましい筆使いだがちょっと人を惹きつける。私は三年前の夏の一夜を思いだす。水のような月の光が畳の上までさし込んで、庭の八手の疎らな葉影は淡く縁端にくずれた。