Japanische Klassiker mit Furigana
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あいのごとく
愛のごとく
山川 方夫
Lesen Sie 愛のごとく (あいのごとく) von 山川 方夫 (やまかわまさお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 103.908 Zeichen · 210 Bildschirme
がなかった。私は、たとえかつかつにせよ、自分がこうして一家何人かの生計を賄えていることだけで、信じられぬほどの大事業を遂行している気持でいた。その他になしうるどんな仕事もなく、能力の余裕もないと信じていた。私には好きな女もいなかったし、格別の趣味もなかった。
私の世界は灰色で、乾燥し古びたゴムのようになんの弾力もなかった。が、もともと私は自分には他の世界はないのだと信じていたから、それは苦にはならなかった。ただ、こうして金を稼げるのだったら、私はどんなことでもしたと思う。私にできる母や姉妹、祖父への責任のとり方は、金を稼ぐことだけだった。なにをしてもしなくても、私はその責任の回避だけはしたくなかった。それは義務以上のもので、生きていて自分のすることがそれしかなかったからだ。――そこにだけ、自分が自分である機因も、理由もある。そこをはなれるのは、自分が自分をやめ、自分を去ることを意味している。私はそう思っていた。
下宿を世話してくれた友人だけがよく電話をくれ、他の友人の動静や私への批判の言葉などをつたえてきた。彼の言葉はありがたかったが、私には、彼を含め友人たちはすべて偉人だった。