Japanische Klassiker mit Furigana
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ばしゃ
愛の挨拶・馬車・純粋小説論
横光 利一
Lesen Sie 愛の挨拶・馬車・純粋小説論 (ばしゃ) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 40.699 Zeichen · 78 Bildschirme
掃溜のような窪んだ表の街も夜になると祭りのように輝いた。その低い屋根の下には露店が続き、軽い玩具や金物が溢れ返って光っていた。群集は高い街々の円錐の縁から下って来て集まった。彼はきょろきょろしながら新鮮な空気を吸いに泥溝の岸に拡っている露店の青物市場へ行くのである。そこでは時ならぬ菜園がアセチリンの光りを吸いながら、青々と街底の道路の上で開いていた。水を打たれた青菜の列が畑のように連なって、青い微風の源のように絶えずそよそよと冷たい匂いを群集の中へ流し込んだ。
彼は漸く浮き上った心を静に愛しながら、筵の上に積っている銅貨の山を親しげに覗くのだ。そのべたべたと押し重なった鈍重な銅色の体積から奇怪な塔のような気品を彼は感じた。またその市街の底で静っている銅貨の力学的な体積は、それを中心に拡がっている街々の壮大な円錐の傾斜線を一心に支えている釘のように見え始めた。
「そうだ。その釘を引き抜いて!」
彼はばらばらに砕けて横たわっている市街の幻想を感じると満足してまた人々の肩の中へ這入っていった。しかし、彼は人々の体臭の中で、何ぜともなく不意に悲しさに圧倒されて立ち停った。