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Japanische Klassiker mit Furigana

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ばしゃ

愛の挨拶・馬車・純粋小説論

横光 利一

Lesen Sie 愛の挨拶・馬車・純粋小説論 (ばしゃ) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 40.699 Zeichen · 78 Bildschirme

Aozora Bunko

馬車

由良は多木の紹介で脳に特効あるという彼の郷里の温泉へ行くことにした。医者は由良の脳病の原因を疲労の結果だというのだが、とにかく満ち溢れていた水を使い尽してしまった後に起るあの空虚な皮質ばかりを、露骨に頭脳は絶えずがんがんと感じるのだ。文字を見ていても、行と行とが浮き上って紙の上で衝突を始めたり、物事を考えていても、それが心の中で言葉となって進行を始めかけると、もう言葉そのものが前後を乱してばらばらに砕けてしまい、あちらに動詞が散ったり、名詞ばかりがぴたりと一定の所に停止してしまったりして、頭の中では、秩序がも早や頭脳の存在そのものとだけなって、不安が一層激しく増して来るばかりとなって来た。或る日由良は医者に見て貰うために知人の医者の前に立った。すると医者は、「譬えば君は街を歩くだろう、その場合どちらへ行こうかと考えても、君の頭はもういけない。とにかく、一切合切思考するということがいけないのだから、その覚悟で一年を暮すよう。」と由良に云った。考えてはいけない、――つまり大人でありながら、感性ばかりの三つ児のようになって生活を一年の間せよというこの難題に逢うと、由良はこれは狂人になっておれと云われたのと同様だと思った。