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Japanische Klassiker mit Furigana

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ばしゃ

愛の挨拶・馬車・純粋小説論

横光 利一

Lesen Sie 愛の挨拶・馬車・純粋小説論 (ばしゃ) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 40.699 Zeichen · 78 Bildschirme

Aozora Bunko

それは鈍った鉛の切断面のようにきらりと一瞬生活の悲しさが光るのだ。だが、忽ち彼はにやりと笑って歩き出した。彼は空壜の積った倉庫の間を通って帰って来るとそのまま布団の中へもぐり込んで円くなった。

彼は雑誌を三冊売れば十銭の金になることを知っていた。此の法則を知っている限り、彼は生活の恐怖を感じなかった。或る日彼はその三冊の雑誌を売って得た金を握りながら表へ出ようとした。すると、戸口へ盲目の見馴れぬ汚い老婆がひとり素足で立っていた。彼女は手にタワシを下げてしきりに彼に頭を下げながら哀願した。

「私は七十にもなりまして、連れ合いも七十で死んで了いまして、息子も一人居りましたが死んで了いました。乞食をしますと警察が赦してくれませんし、どうぞ一つ此のタワシをお買いなすって下さいませ。私は金を持っておりましたが、連れ合いの葬式が十八円もかかりましてもう一文もございません。どうぞ此のタワシをお買い下さいませ。宿料を一晩に三十八銭もとられますので、それだけ戴けないとどうすることも出来ません。どうぞ一つこれをお買いなすって下さいませ。」

彼はその十銭の金を老婆の乾いた手に握らせて外へ出て行った。