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Japanische Klassiker mit Furigana

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あいよあい

愛よ、愛

岡本 かの子

Lesen Sie 愛よ、愛 (あいよあい) von 岡本 かの子 (おかもとかのこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 46.138 Zeichen · 99 Bildschirme

Aozora Bunko

十年前、私は或る出来事のために私の神経の一部分の破綻を招いたことがありました。私の神経がそのために随分傷んでしまいました。その春、私が連れて行かれたその狂院に咲き満ちて居た桜の花のおびただしさ、海か密雲に対するように始め私は茫漠として美感にうたれて居るだけでした。が、やがて可憐な精神病患者が遊歩するのを認めて一種奇嬌な美の反映をその満庭の桜から受け始めました。無意味ににやにや笑うもの、天を仰いで合掌するもの、襦袢一つとなって、脱いだ着物を、うちかえしうちかえしては眺むるもの、髪をといたり束ねたりして小さな手鏡にうつし見るもの、附き添いに、おとなしく手をとられて常人のごとく安らかに芝生等の上を歩むもの、すべて老若の男女を合せて十人近い患者の群が、今しも、病房から昼餉ののちの暫時を茲へ遊歩に解放されて居るのだと分りました。桜花が、しっきりなしにそれらの上へ散りかかります。患者のうちのあるものは、うるさそうにそれを髪から払いのけ、あるものは手を振ってよけました。が多くは、細かい花びらが頬を掠めて胸に入っても、一向無関心でありました。無関心が一層あわれを誘いました。