Japanische Klassiker mit Furigana
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つきもの
憑きもの
豊島 与志雄
Lesen Sie 憑きもの (つきもの) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 12.983 Zeichen · 27 Bildschirme
断崖の肌が、灰色に赤や青の点彩をつけて、現われたり隠れたりする。
「まあ、きれい。」
秋子は嘆声を発して、火口を覗きこんでいる。
私はぎくりとして身を退いた。ふしぎなことに、噴火口を見た時から、彼女の存在を忘れていた。それが突然、彼女の嘆声によって、夢から呼び覚された工合になった。彼女がすぐそこに居たのだ。淡緑色の簡素なスーツをつけ、髪は宿での和服の時とちがい、頸すじに梳かし流し、横顔が蝋のように白い。足元には、数十メートルの断崖と、赤熱の熔炉。危ない。彼女のためにではなく、自分自身に私は感じた。夢の中で見るのと、同じ危険だ。底知れぬ断崖の上に立ち、一歩誤れば、その奈落に墜落するばかりで、もう既に足場はなく、墜落の手前の一瞬間、恐怖がぞっと全身に流れる、あの危険だ。そしてその危険が、私から彼女へ伝わる。彼女は振り向いた。表情もなにも私の眼にはいらない。私は飛びついた。彼女を突き落すか、彼女と一緒に転げこむか。私は飛びついて、然し、後方へ引き倒した。
彼女は砂上にのび、私はそばに屈みこんでその腕を捉えていた。
「危ない。」
彼女は半身を起して、私を見守った。