Japanische Klassiker mit Furigana
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つきもの
憑きもの
豊島 与志雄
Lesen Sie 憑きもの (つきもの) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 12.983 Zeichen · 27 Bildschirme
「危ないじゃないか。」
私は怒鳴りつけた。彼女は私の顔を見つめた。私の激しい憤怒に、彼女は圧倒されたようで、口を利けず、じっと見つめてるだけだ。その眼が、違っていた。ぴたりと張りつくだけで何にも見えない眼眸ではなく、生々と光って、何かを探りあてようとする視力だ。私は彼女の肩を抱き、そして囁いた。
「心配しないでもいい。」
彼女は頷いたが、何を頷いたのか私にも分らず、ただ白々しい気持ちになった。私は立ち上り、彼女も立ち上り、そして火口を離れて歩きだした。
夜は明けてきた。火口の中にも明るみがさして、底の赤熱の光りは淡くなり、ただいぶってるだけである。中天はもう青く冴え、東の空の薄靄の中に、白い太陽が浮き出している。
岩かげの地面に腰を下して、私達は弁当を開いた。折詰には海苔巻がはいっていた。海苔巻の中は、干瓢と沢庵と玉子焼である。それをつまみながら、私はサイダー瓶の酒を飲み、彼女は水筒の茶を飲んだ。
「さっき、なにをお怒りなすったの。」
「怒りやしないよ。」
「そう。」
「怒りやしない。」
彼女はにこりと笑った。
至極、太平なのである。だが、一瞬、不安がかすめた。