Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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わがやのらくえん

我が家の楽園

久生 十蘭

Lesen Sie 我が家の楽園 (わがやのらくえん) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 90.195 Zeichen · 175 Bildschirme

Aozora Bunko

千々子の白い馬

一

そういった意味のことを、ボソボソとつぶやいただけだった。

千々子の白い馬

一

今年は寒流がどうとかして、季節がひと月ほどおくれているということだったが、五月の中頃になって、真夏のような暑い日が四五日つづくと、いままで鳴りをひそめていたアメリカの花どもが、いちどにドッと咲きだした。

麻布市兵衛町なるわが石田家の庭は、『名園図鑑』にも載った風雅な茶庭で、小径づくりの飛石のそこここに、鉄線、うずら梅、馬酔木、どうだん、山茶花などのつくりものを目だたぬように植えこみ、藪蔭の思いがけないところに、梔子や橘の蕾が、明日あたりは咲く、ゆたかなふくらみを見せていたりする。

夏のはじめの朝などは、筋落ちの小滝のある池のほとりで、汀石の控えにしたあじさいが露もしとどな風情を見せていたものだったが、日本くさいものは、のこらず消えて無くなり、アメリカ紫式部、アメリカン・デイジィ、マリゴールド、アメリカン・デルヒニューム、ベチュニア、ヴァーベナ……と、純アメリカの花ばかりが、めちゃめちゃに咲き狂うのに、ジェネラル・マックアーサアという名の這薔薇までが蔓をだし、あたまをちょん切られた地境の黒松の軒に這いあがって、目もあやな薔薇のパーゴラをつくったので、わが家の庭は、さながら新教徒の天国か、旧約聖書の楽園のようなおもむきになった。