Japanische Klassiker mit Furigana
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わがやのらくえん
我が家の楽園
久生 十蘭
Lesen Sie 我が家の楽園 (わがやのらくえん) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 90.195 Zeichen · 175 Bildschirme
二
と、ひとりでぶつぶついっているのを、五十雄君が聞きつけ、
「どんなにひっぱたいたって、アメリカ人になりっこはないんだから、日本人に生れたのを呪うようなことは、やめなさい」
と例の神の声で、おだやかに説いてきかせた。
五十雄君としては、「国籍法は属地主義でも、皮膚の色までは変えられません。いくらアメリカ人になったつもりでも、飛びだしたジャパニーズ・ボーン(顴骨)と、この釣り眼が承知しません」と、ある日系米人の娘が嘆いていたのを紹介するつもりだったのだが、どうとったのか、千々子さまは、むやみに怒りだして、
「夫でもあるまいし、あなたなんかに、あたしの身体を批評する権利があって?」
といいながら、五十雄君の脊髄カリエスのいちばん痛いところに武者ぶりつき、五十雄君は、それで四十度もの熱をだしたという騒ぎがあった。
二
千々子さまは、その辺にいる蒙昧なパン嬢とはちがうから、アメリカ人の子供を生めば、じぶんまでが、アメリカ人になったと感ちがいするほど、浅墓ではない。千々子さまの気宇は、もっと雄大なので、たとえば、ナポレオンが、征服した国々の国旗を集めて、ひとりで悦にいっていたように、うまく網におとしこんだ魚の国に属する国旗をあげ、今日のよろこびを完全なものにしたいと、弱り加減の頭で考えたのである。