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Japanische Klassiker mit Furigana

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わがやのらくえん

我が家の楽園

久生 十蘭

Lesen Sie 我が家の楽園 (わがやのらくえん) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 90.195 Zeichen · 175 Bildschirme

Aozora Bunko

引渡しに先だって、五月四日の午前十一時から、家具什器の点検引合わせ、ならびに建築構造物の損傷改変の有無を調査するから、立ち会うようにという命令なのである。

石田家におけるその夜の家族会議は、湿りに湿って、露もしとどのありさまだった。

家族会議といっても、長男の五十雄君はつづきの六畳で寝て居り、生臭い人生と一切やりとりをしない気でいる長女の千々子さまは、自分の居場所にきめている玄関の三畳へひっこんで音もたてない。

けっきょくのところ、破れ褞袍を重ねにした石田氏と、ほつれ放題の男物のカーディガンをひっかけて髪をふり乱した賢夫人が、六年の間、ただの一度も片附けられたことのない茶の間のチャブ台を挾んで向きあい、かくいう次女の百々子がオブザアバーの格で、ほどいいところに、漫然と介在しているにすぎない。

「あなたは、どうか知れませんが、あたしにとっては、このうえもない気楽な境涯でした。六年間ぐらい、人間らしい生活をしたことはありませんでしたね……ご近所は、気のいいおかみさんばかりで、草履と下駄をちんばに穿いて駆けだしたって笑いもしないし、大根の一本買いも、ここじゃあたり前のことで、照れないですみます。