Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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わがやのらくえん

我が家の楽園

久生 十蘭

Lesen Sie 我が家の楽園 (わがやのらくえん) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 90.195 Zeichen · 175 Bildschirme

Aozora Bunko

庭もそうだが、長女の変わりかたも、はげしかった。麻布の家の門を入るなり、千々子さまは、ひとがちがったようになってしまった。浮世のことは、万事、嫌といった、ひとの気持を滅入らせるような、じめじめした表情はどこかへ飛んでしまい、思いだし笑いをしたり、口のなかでブツブツいったり、ひとりで浮き浮きしていた。プールとテニス・コートの全景をながめやり、まわりの風致に調和するような音楽的な声で、

「これが、お化けでも出そうだった、あの気味の悪い邸なんでしょうか……むかしのおもかげなんか、どこにもありませんわねえ」

と、うっとりしたみたいな声で、石田氏にいった。石田氏は、面白くもないような顔で、舌打ちをしながら、

「おもかげどころか! あそこをみろ。バカなことをするやつも、あるもんだ」

と西の地境いのほうを指した。

庭端の地境いになるところに、大きな松林があって、真西からさしかける陽を防いでいたものだが、樹齢五百年という有名な黒松の樹牆が、一本のこらず、おなじ高さに頭をちょん切られたうえ、幾何模様のように枝を間引かれてしまったので、地境い一帯が、むやみに陽あたりがよくなっている。