Japanische Klassiker mit Furigana
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わがやのらくえん
我が家の楽園
久生 十蘭
Lesen Sie 我が家の楽園 (わがやのらくえん) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 90.195 Zeichen · 175 Bildschirme
広廊の段々に腰をかけて、目がさめるのを待っていると、となりの部屋で電話のベルが鳴った。百々子が電話に出ると、女のひとの声がいきなり耳に飛びついてきた。
「こんちは、あたしのワニちゃん、ご機嫌いかがなの? あたし、誰だかわかるでしょ?」
「もしもし、なんでしょうか」
「なんですかって、なによ……あなた女中さんね、ワニちゃんに出てもらってちょうだい」
わが石田家には、ワニちゃんなんてひとはいない。よそとまちがえて掛けたのだろうと思ったが、念のために、賢夫人に聞いてもらうことにした。
賢夫人が代って電話に出た。さっきの冴えた声が、跳ねだすように受話器から洩れてくる。
「ワニちゃん? あなた、死んだわけでもなかったのね。このせつ、ちっともシマに現われないってんでしょ……ええ、さっき金田へ寄ってみたうえのことなの……ですから、もしかして、ご病気なんかじァないかしらと思って……あちらへ電話をかけたら、なんとかの日でお休み。面白くないから、ほうぼうへ電話を掛けちらしたうえで、やっとそちらにいらっしゃることがわかったの。昨夜から、泊りこんでいらっしゃるんだって?」
ありふれた挨拶にすぎないが、淀みもなく繰りだしてくる言葉の様子のよさときたら、あっと叫びだしたくなるくらいだった。