Japanische Klassiker mit Furigana
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わがあいするしじんのでんき
我が愛する詩人の伝記
室生 犀星
Lesen Sie 我が愛する詩人の伝記 (わがあいするしじんのでんき) von 室生 犀星 (むろうさいせい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 116.728 Zeichen · 231 Bildschirme
木剣を木綿袋に入れて通う辰雄は、ひとなみの剣舞師の習得で少しも躊躇わないで、袴の股立ちを取って剣の舞いを演じていた。
大正十二年五月、私は当時田端の高台に住んでいた。或日お隣の奥さんが見え、わたし共の主人の府立第三中学校出身に堀辰雄という生徒がいるが、いちど紹介してくれと言われていますので、会っていただけるかどうかというお話であった。私は何時でもと答えた。お隣は広瀬雄校長であり第三中学に芥川龍之介も在学していたことがあり、堀は当時二十歳だった。
或日お母さんに伴われて来た堀辰雄は、さつま絣に袴をはき一高の制帽をかむっていた。よい育ちの息子の顔付に無口の品格を持ったこの青年は、帰るまで何の質問もしなかった。お母さんはふっくりした余裕のある顔付で、余り話ができない人のようだった。これが私の堀のお母さんに会った初めであり、そして終りであった。大正十二年の震災でこのお母さんは、隅田川に火に趁われて水死された。
お母さんは堀がいまに本を書く人になることを考えて、或る製本屋に近づきがあったので態々菓子折を提げ、うちの子の本が出るようになったら、どうかよい本に製ってやって下さいと、挨拶にゆかれたそうである。