Japanische Klassiker mit Furigana
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あるおんな
或る女
有島 武郎
Lesen Sie 或る女 (あるおんな) von 有島 武郎 (ありしまたけお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 149.981 Zeichen · 295 Bildschirme
葉子はいたずら者らしくそっと足音を盗んで、忍び忍び近づいて、いきなり岡と肩をすり合わせるようにして立った。岡は不意に人が現われたので非常に驚いたふうで、顔をそむけてその場を立ち去ろうとするのを、葉子は否応なしに手を握って引き留めた。岡が逃げ隠れようとするのも道理、その顔には涙のあとがまざまざと残っていた。少年から青年になったばかりのような、内気らしい、小柄な岡の姿は、何もかも荒々しい船の中ではことさらデリケートな可憐なものに見えた。葉子はいたずらばかりでなく、この青年に一種の淡々しい愛を覚えた。
「何を泣いてらしったの」
小首を存分傾けて、少女が少女に物を尋ねるように、肩に手を置きそえながら聞いてみた。
「僕……泣いていやしません」
岡は両方の頬を紅く彩って、こういいながらくるりとからだをそっぽうに向け換えようとした。それがどうしても少女のようなしぐさだった。抱きしめてやりたいようなその肉体と、肉体につつまれた心。葉子はさらにすり寄った。
「いゝえいゝえ泣いてらっしゃいましたわ」
岡は途方に暮れたように目の下の海をながめていたが、のがれる術のないのを覚って、大っぴらにハンケチをズボンのポケットから出して目をぬぐった。