Japanische Klassiker mit Furigana
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あるおんな
或る女
有島 武郎
Lesen Sie 或る女 (あるおんな) von 有島 武郎 (ありしまたけお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 149.981 Zeichen · 295 Bildschirme
生まれて以来、葉子は生に固着した不安からこれほどまできれいに遠ざかりうるものとは思いも設けていなかった。しかもそれが空疎な平和ではない。飛び立っておどりたいほどの ecstasy を苦もなく押えうる強い力の潜んだ平和だった。すべての事に飽き足った人のように、また二十五年にわたる長い苦しい戦いに始めて勝って兜を脱いだ人のように、心にも肉にも快い疲労を覚えて、いわばその疲れを夢のように味わいながら、なよなよとソファに身を寄せて灯火を見つめていた。倉地がそこにいないのが浅い心残りだった。けれどもなんといっても心安かった。ともすれば微笑が口びるの上をさざ波のようにひらめき過ぎた。
けれどもその翌日から一等船客の葉子に対する態度は手のひらを返したように変わってしまった。一夜の間にこれほどの変化をひき起こす事のできる力を、葉子は田川夫人のほかに想像し得なかった。田川夫人が世に時めく良人を持って、人の目に立つ交際をして、女盛りといい条、もういくらか下り坂であるのに引きかえて、どんな人の配偶にしてみても恥ずかしくない才能と容貌とを持った若々しい葉子のたよりなげな身の上とが、二人に近づく男たちに同情の軽重を起こさせるのはもちろんだった。