Japanische Klassiker mit Furigana
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あるおとこのしゅき
或る男の手記
豊島 与志雄
Lesen Sie 或る男の手記 (あるおとこのしゅき) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 43.279 Zeichen · 86 Bildschirme
」
そして私達は敵意を含んだ眼付で見合った。
茲で私は一寸断っておかなければならない、筆が余り滑りすぎたようだから。実は私は、いつの頃からか覚えないが、性慾の衰退に可なり悩まされていた。原因は毎日の晩酌と過度の喫煙とに在ると、医者も云うし自分でも思っていたが、それがどうしても止められなかった。なぜなら、生活全体が早熟してしまって、本当の決心というものが私には不可能だったから……がこのことはもっと先で云おう。兎に角私は性慾が著しく衰退して、そういう事柄にさっぱり興味がなくなってしまっていた。私はいつも何だか満ち足りないような焦燥のうちに暮していたと、前に一寸述べておいたが、それも一つはこれが原因だった。たまに玄人の女に接することがあっても、後の感銘は実に索漠たるものだった。殊に家庭に於てはそれが甚しかった。そのために私の家庭には、冷かな風が流れ込んできた。子供に乳房を含ましたり頬ずりをしたりしながら、私の方へじろりと投げる妻の眼付に、私は或る刺々しいものを感じて、ぞっとするようなことがあった。どうして子供なんか出来たんだろうと、そんな風に溯ってまで考えることがあった。