Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
おうぎの
扇野
山本 周五郎
Lesen Sie 扇野 (おうぎの) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 33.727 Zeichen · 67 Bildschirme
栄三郎は訝しげな眼で娘を見た。
「こんなこと父さんに知れたらたいへんですわ、先生にだって叱られるにきまってますけれど、あたしどうしてもあのままではなにかもの足りない、もう一つなにか点景があるほうがいいのじゃないかしらと思ったもので、自分ではまさか云えませんから、そっと石川さんにそう云うように教えてあげたんですの」
「すると、――」と栄三郎は苦笑した、「あの男はそのままを口移しに云ったんですね」
「だから気になさることはありませんって、あのときおけいが申上げましたでしょ、あの人の頭の中には自分が御家老の息子だということと、女のことよりほかになんにもありませんからって、――でも、やっぱりよけいなことだったでしょうか」
「いや、よけいなことではなかった」栄三郎は頷いて云った、「あの男の口から云われたので、却ってよかったかもしれない、自分でも不満だったのだが、あの虫の好かない男に云われたから却って奮発心が起こった、おけいさんに礼を云わなければならないくらいだよ」
「それならよかったわ、それが本当なら、礼なんか云って頂くより嬉しいわ」
おけいはきらきらするような眼で、じっと栄三郎をみつめ、それから急にぼうと頬を染めながら、逃げるように去っていった。