Japanische Klassiker mit Furigana
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とびらのかなたへ
扉の彼方へ
岡本 かの子
Lesen Sie 扉の彼方へ (とびらのかなたへ) von 岡本 かの子 (おかもとかのこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 8.155 Zeichen · 17 Bildschirme
及川、貴様は科学者にしては冷静を欠くと、よく先生に叱られたものですが……」
良人の話によると、珪次は、良人が私との離別を云い出すと、激しく怒ったり泣いたりして、自殺するとまで云ったとのことであります。
「そこで安心して帰って来ました」と良人は云いました。私はあわてて
「それがどうして安心なのでございます」
と訊いた。良人は
「あの時、珪次君がじーッと眼を据えて、唇を噛み、顔が鉛色にでもなるようだったら、監視も要し兼ねないでしょうが、ああいう風に即座にタップのステップでも踏んでしまうように興奮して仕舞えば、総てが発散して、却ってあとには残らんでしょう」
「どうしてそんなことを……」
「僕は自分で苦しんだ体験に無いことは、自分で信じもせず、また人にも云えぬようになっていますね」
私はこの人は恐ろしい男である。ひょっとすると、この力で巧んで私を珪次から奪い取ったのではあるまいかと、脅迫観念にさえ襲われました。しかし、仮りに奪われて来たにしろ、その力は讃嘆すべき程頼母しかった。こうして私はやがてこの人と結婚式を挙げました。
「どうだね、ここは」
良人は浴室で一風呂浴びて来た血色のいい肌へ浴衣に丹前を重ねたものを不器用に着て縁に立ちました。