Japanische Klassiker mit Furigana
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つめ
探偵クラブ 烙印
大下 宇陀児
Lesen Sie 探偵クラブ 烙印 (つめ) von 大下 宇陀児 (おおしたうだる) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 51.509 Zeichen · 103 Bildschirme
毒
一
一
小野村伯太郎には、まだ何一つ分ってはいなかった。前のママちゃんのことを覚えているには覚えていた。いつも優しい微笑を浮べていて、その癖に、どこか愁の籠った眼附をした前のママちゃんの顔が、今でもどうかすると、お居間の片隅だの天井だのからひょっと覗き込んでいるような気がするけれども、そのママちゃんが、ほんとうはどういう訳で急にいなくなってしまったのか、それからまた、そのママちゃんがいなくなってから一年経った時に、今度の若い美しいママちゃんが、どういう訳でやって来たのか、どうもハッキリと分らずにいた。
幼稚園へ行けるようになった伯太郎にさえ、こうして訳が分らずにいたのだから、その妹の小野村露子と、そのまた弟の、これはようやくあんよが出来るだけになった小野村伯二と、この二人にも無論訳の分る筈がなく、伯太郎と露子とは、いつか次のような会話をしたことがあった。
「ね、お兄ちゃん。お兄ちゃんは、先のママちゃんがどこへ行ってらっちゃるか知っている?」
「うん、知ってるよ」
「どこ?」
「ほら、あのママちゃんはね、ずっと先の雨の降る日に、寝たまんまで金ピカピカの自動車に乗って出て行ったろう。